2009年 10月 10日
サクリファイス
sacrifice
ライフログにも追加をしておいた。yahoo辞書で調べるならば次のように出てくる。
[1](神に)いけにえを捧(ささ)げること;いけにえ, 犠牲, 捧げ物,〈to..への〉.
・kill a goat as a ~ to God
神への捧げものとしてヤギを殺す.
[2]神学キリストのはりつけ.
[3]犠牲特定の目的達成のための;犠牲(的行為).
日本語への訳であっても、この語の意味するところが宗教的な意味合いを持っていることがわかる。もちろんそれは[1][2]で分かるように、キリスト教としての意味である。
先週のレースの際、友人からこの本を借りた。ついさっき読み終わったのだが、普通あまりこの時間に起きては居ないのだが、興奮が冷めないうちに書いておこうと思いキーを叩いている。自転車競技はチームスポーツであり、一人のエースを勝たせるためにアシストが力を尽くす。その犠牲の上に勝利が立てられるため、アシストは自らが消耗し、レースを去ったとしてもエースが勝つことができれば自分の勝利のように喜ぶ。だからそこには華々しい表舞台からは見ることの出来ないさまざまなドラマが存在する。この小説は自転車競技を舞台として、背後にあるそういった犠牲について描いている。主人公はあるチームの山岳アシスト。
前日まで3分の1ほど読んでおり、今日で一気に残りを読んだわけだが、最初に引っかかったのが半ばで出てくる『アシストとして走るほうが自由を感じる』との主人公の言葉、、、。これは単にエースとして走るプレシャーから逃れられるからという意味ではなかろう。この主人公は自分が単に勝者として勝つことだけに満足できないのだ。これがこの小説の中心テーマなのだろう。あっさりと書かれているここには、人間の根本的な性質が見え隠れする。
人は自分の為にだけ生きていくことに不自由を感じ、また他者のために自分を捧げていくことに自由を感じるように出来ているのだ。
聖書にもこういう言葉がある。それにあたる部分を内容が重複するが、福音書からそれぞれ抜き出してみよう。
マタイ 10:39自分の命を得ようとする者は、それを失い、わたしのために命を失う者は、かえってそれを得るのである。
マタイ 16:25自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを得る。
マルコ 8:35自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのため、また福音のために命を失う者は、それを救うのである。
ルカ 9:24 自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを救うのである。
ルカ 17:33自分の命を生かそうと努める者は、それを失い、それを失う者は、かえって保つのである。
ヨハネ福 12:25自分の命を愛する者は、それを失うが、この世で自分の命を憎む人は、それを保って永遠の命に至る。
もういっちょ行ってみますか。
ヨハネ福 15:13友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。
ちょっとしつこいですかね。お気づきになりますか? 実は聖書の中心命題も『犠牲』であり、それを聖書は『愛』と表記します。著者は後半に『十字架』という言葉を使っていることから分かるように明確にそれを意識して書いているのが分かりました。自転車競技はヨーロッパの騎士道精神と表されることがありますが、騎士道精神の背景にあるのが、キリスト教の犠牲の精神です。私が、妙にこのスポーツに引かれ、馴染むのもそのあたりのことかもしれないですね。
誰もが自分のことばかりで精一杯になり、他人のことなどにかまっていられない無関心な乾いた世の中で、日本にも嘗てはあった、他の人のために犠牲を払うこと。ばかばかしいとも思いますが、何故か黙って見過ごすことも出来ない。NHKの大河ドラマで、歴史からいえば負け組であるのにもかかわらず、自らの損を省みない直江兼続や石田三成のような生き方が取り上げられるのも、時代の求めなのかもしれませんね。
イエスの生き方も、世の中の見方から言えば、失敗で完全な負け組ということになるでしょう。自らを神の子(創り主の子)と言っても結局は、人々に拒否されて十字架で殺されてしまうのですから、、、。そんな敗者の生き方が、歴史上の他の誰よりも大きな影響を人類全体に与えているとは驚くべきことです。
愛、愛とは言ってはいても、そのために必要になる犠牲を払おうとはしない私たち、、、。カラカラに乾いている世の中の人は敏感な嗅覚をもって、本物か偽物かをかぎ分け少しでも潤いのあるところに身を寄せようとする。世にあって、本来それを具現化するはずのキリスト教会。重い問題を抱えている人が、見せ掛けのやさしさで癒され、解決を得るとは到底思えない。本当のサクリファイスによらなければ、、、。
とまぁ、読書感想文でした。猪狩ちゃんありがとね。後はやまてくさんに渡します。
by dynabooksx
| 2009-10-10 23:39
| 真也の視点