組織の利点、弱点

 人が集まると共同体ができる。人が集まるということは、そこにいる人たちを結び合わせる何らかの共有理念、概念があるのが普通だ。しかし、いくら共通の考え方を持っているとはいっても個人は個人だ。それぞれに、特有の価値観を有している。集団で活動することを優先すると、常にこの個人は圧迫を受ける。共同体の目的が明確にされ、それに賛同するかどうかを問い、それぞれの判断において自由に選択して集った者達であれば堅い一致が生まれるだろう。
 反対に、組織が形骸化し、目的を失った所で強制的に一致を求めると、個人は破壊的なダメージを受ける。共同体が大きければ大きいほどまとめ上げるために、明確な理念が必要になるだろう。また卓越した行動力、指導力をもったリーダーが必要になる。聖書の中で、傑出したリーダーをあげるのならモーセが良かろう。モーセは人格的には引っ込み思案な憂鬱気質であったが、エジプトの王室で学問や上に立つ者としての理念を身につけ、また荒野で謙遜になる事を身体で知った希有なるリーダーだった。
 彼は、荒野の中を約束の地へ向かうとのスローガンの下何十万の民を導いた。もちろんバックでイスラエルの神が導いたのだが、、、。出エジプト記18章を見ると、舅のエトロの助言で組織作りをする模様が描かれている。モーセは民の問題を処理するのに多くの時間を割いていた。そのために長~い列ができるほどだった。これを何とかせねばならんとして千人、百人、五十人、十人の長と中間管理職を置きました。民全体が六十万人とすると、約十万の指導者が一度に作られたことになります。
 この物語はこれまで、効率的な働きをするためには組織作りが重要であるとして語られてきました。確かに、リーダーは重要でありましょう。しかし、上下関係の組織の形作りを優先すると共同体は急激に意志の疎通を図ることが難しくなります。トップに立つものが有能であっても、中間の者がそうではない場合、末端の意見を吸い上げるのは難しいからです。

 モーセがピラミッド型の組織作りをした結果どうなったでしょうか? 続く記事は、十戒に続く金の子牛問題です。組織ができると、民が直接モーセの所に問題を持って来ることがなくなりました。すべて中間の者が引き受けたからです。十人の長から五十人の長、百人、千人の長へと、、、、。そんな伝達法で民の現実が伝わるわけがありません。モーセは、この組織のせいで一時うまく問題を解決したように見えましたが、偶像礼拝に傾いていく民の予兆を察知できませんでした。

 人の数が多くなれば、多くの人と直接顔を合わせ信頼関係を獲得できる優れたリーダーが必要になるでしょう。いくら中間に行事を企画したり事務能力に長けている人がいたとしても、一人一人の魂にふれ、問題に直接触れることができなければ、リーダーとはいえないでしょう。そのような者が指導者に多く立って行くとき、組織は急激に表面化、形骸化し心を通わせることが難しくなります。本質的に既に失っている指導力を、まだあるかのように偽るため、かえってそれが障害になり正直なコミュニケーションを阻害するのです。
 
 モーセのようなリーダーは大量生産をすることはできません。特殊な状況によって生まれた時代の申し子はそう出るものではありません。確かに、リーダーの意志を継ぐ次のリーダーを育てることは大切です。しかし、そのリーダーも特性を見極めた上、少人数で時間をかけて育てるべきでしょう。
 リーダーがいないといって、立場として数あわせとしてのリーダーを求めていくとき、ただでさえ形だけになった組織は最後の時へ向かいます。イスラエルの神は、金の子牛を拝む民を滅ぼそうと思いましたが、モーセは必死にそれを止めました。その後、再生の道を歩みましたが、その世代がすべて死んで新しい世代になるまで、民は約束の地へ入ることは出来ませんでした。

 先の世代の失敗と痛みを知り、同じ間違いは二度とするまいという新しいリーダーが立つとき、養育の時は終わり、学んだことを活かす実践の場であるカナン侵攻がはじまるのです。


追伸 私がこの文を書いた底辺には、現代社会の分業化や効率化に対するアンチテーゼがある。世の中は利便性を追求してきたが、それで人が幸福になったとはどうしても思えない。暮らしが、効率化され、家族での共同作業が必要なくなり、土を扱う生産作業から切り離されると一気に生活感を失う。ここら辺でもう一度、人が生きるということ、生活することとはどういうことなのかを問い直す必要があるだろう。
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by dynabooksx | 2007-10-12 07:09 | 真也の視点

真也の歩み、愛理の子育て日記。私たちは福島第一原発5kmの双葉町民。時代は動く。私たちはその目撃者になる。画像のペレット&薪ストーブは、真也の施工作品。新天地を暖かく燃やし照らしてくれる。
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